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頂き女子りこぴぃ

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人 物

渡辺敬子(42)無職

刑務官

裁判官

雑居房の女(58)

中村武(43)雑誌社のライター

吉村かなこ(28)簡易宿泊所の運営

女A


〇裁判所・中
渡辺敬子(42)が、うつむきながら判決結果を待っている。腰縄をかけられている。
裁判官「判決。被告は『頂き女子りこぴぃ』を名乗り、東京都新宿区にて、マッチングアプリなどで知り合った男性から計約1億円を騙し取った。そして期限までに申告せず、所得税およそ4千万円を脱税したとして、所得税法違反、また、詐欺罪で懲役4年を言い渡す」
裁判官の判決を聞いた後、敬子は裁判官に深々と頭を下げる。

 

〇雑居房・早朝
刑務官に連れられながら、敬子が雑居房に入っていく。
雑居房の女「……新入りか」
敬子「よろしくお願いします」
雑居房の女「あたしの邪魔さえしなけりゃいいいから。あたしは上のベッド。あんたは下のベッド。で? 何やったのさ?」
敬子「……詐欺ですね……簡単に言うと……」
雑居房の女、驚いて。そして、興味深々で。
雑居房の女「その顔で? いくら?」
敬子「1億ぐらいです……多分。全部合わせたら」
雑居房の女、目を見開く。
雑居房の女「人は見た目によらないね。美人に金が行くんじゃないんだね。はー。恐ろしい。あんた、策士なんだろうけど、あたしに変な攻撃、仕掛けないでよ」
敬子「変な攻撃って……」
雑居房の女「電波とか出すなよ」
敬子「電波って……出しませんよ……」

 

〇面会室・中

色付きの眼鏡をかけた中村武(43)が敬子を待っている。
中村「初めまして。週刊ビッグモーターの中村と申します」
名刺を差し出す中村。
敬子「……週刊誌の方が何の用ですか?」
中村「『頂き女子りこぴぃ』のことを雑誌で特集させてもらおうと思って来ました。謝礼は勿論お支払いします。ところで、あなたが現金を騙し取った男性、いまでもあなたに会いたいそうですよ」
敬子「……わたしは会いたくないです」
中村「なぜです?」
敬子「わたしに貢いだ男性なんかに興味がないんですよ」

 

〇雑居房・外(四年後)
刑務官が敬子の雑居房をノックする。
刑務官「渡辺!」
敬子「はい!」
雑居房の鍵が開けられる。敬子が白髪だらけになり、ほうれい線が深くなっていることがわかる。
雑居房の女「……出所か。でも……まあ所詮、詐欺師は詐欺師としてしか生きられないよ」
敬子、それを聞いて、雑居房の女に会釈する。
敬子「お世話になりました」
敬子、外に出る。

 

〇簡易宿泊所・中
敬子、花柄のワンピースを着て、簡易宿泊所を見渡す。吉村かなこ(28)が元気よく敬子の元に駆け寄る。
かなこ「こんにちは! あの、警察の方からはちゃんとお話伺っておりますので」
敬子「はあ……どうも……」
かなこ「ここはどんなひとでも受け入れている風通しの良い場所です。敬子さんもどうぞごゆっくりして」
休憩所でだらっとスマホを触っていた女Aが、嬉しそうに敬子を指さして言う。
女A「『頂き女子りこぴぃ』じゃん! うわ、ぶっさ!! 1億! 1億の顔だ!!」
場が騒然となる。女Aがスマホで写メを撮りまくるので、敬子、トイレに駆け込む。