亡者たち
人 物
清原エリ(32)清原みかの姉。
清原みか(30)清原エリの妹。
清原カツオ(7)清原みかの息子。
村上昇(32)清原エリの同級生。
〇清原家・リビング
清原カツオ(7)が黄色いタンクトップ姿と白いパンツといった出で立ちで扇風機に顔をあてている。首にはびしょ濡れになったタオルが巻かれている。ちゃぶ台の上には筆記用具とと もに、小学校の宿題のプリントがばらまかれて置いてある。清原みか(30)は少し離れたところで、水色の薄いワンピースを着て、汗を拭いながら洗濯物を畳んでいるが、スマホの着信音が鳴り、電話に出る。スマホの画面には、「清原エリ」と表示されている。
みか「姉ちゃん? なんだろう……」
そう言って、みか、スマホを耳にあてる。
みか「……もしもし? 姉ちゃん、どうしたの?」
エリの声「あーいまから実家帰ろうと思って」
みか「今から? 栃木まで?」
エリの声「もう近いとこまで来てっからさ」
みか「だって確か今、東京でホステスやってるって」
エリの声「やってるけど。実家帰ったら駄目な理由、なんかある? あ、あんたの旦那さん、もしかして帰ってきたとか?」
みか、少しイライラして。
みか「帰ってきてないけど」
〇清原家・玄関
引き戸が開けられる。胸の谷間がくっきりと強調されている、派手な紫のスパンコールドレスを着た清原エリ(32)が煙草を吸いながら無表情で立っている。みかとカツオ(7)、急いで玄関に向かう。
みか「ちょっとちょっと! 姉ちゃん、その格好で東京から来たの?」
エリ「そうだけど。いや、仕事用の服しか持ってなくて。お。カツオー! デカくなったな! 煙草吸うか?」
カツオ「うん、エリ伯母ちゃん」
そう言ってエリ、煙草をカツオに渡そうとし、カツオも手を伸ばすが、みかにはたかれる。
みか「姉ちゃん、やめてよ、そういうの。カツオには健康に育ってほしいの」
エリ「なに? まるであたしが不健康みたいに言うじゃん。ま、不健康だけどさ」
エリ、みかにちょっと蔑んだ笑いを向ける。
〇清原家の近くの河川敷(夕)
エリが寝そべっている。ドッジボールをして遊んでいる男の子たちを見ながら、煙草を吸い、スマホでドラゴンクエストをやっている。村上昇(32)、エリに気づいて、ぎょっとしてから、道路から河川敷に降りてくる。
村上「おい……清原」
エリ「ん? すみません。人違いだと思うんですけど」
村上「村上だよ! 同級生っていうかセフレなのかなオレたちの関係っていうのはさ?」
エリ、微笑みを村上に向ける。
エリ「あー。ボンボンじゃん。ボンボン二世。久しぶり。元気でやってる?」
村上「お前さあ……オレから搾取しまくったあげく振ったくせに、よく平気な顔して帰ってこれるな。こんな狭い町に」
エリ、ため息をつく。
エリ「その話は今やめよーて。普通に仕事オフでふらっと帰ってきただけだから。長居もしないし。これ以上、あんたがなんか言うなら、あんたから貰った? 貢がせた? 金、返そうか?」
そう言ってエリ、ブランドバッグから札束を出して村上に見せる。
村上「いらねえよ……。っていうか、だからなんで帰ってきたのかって」
エリ「爆破」
村上「え? なんて?」
エリ「この街、爆破してやろうかと思って」
エリ、八重歯を出してキャッキャと笑う。
